ハードボイルド第六条

楽な道を選んではならない

楽な道は、たいてい優しい顔をしている。

すぐ稼げる。

すぐ効く。

すぐ解決する。

面倒な説明はいらない。

努力もいらない。

今の苦しさだけを消してくれるように見える。

だから人間は飛びつく。

俺は事件を見てきた。

怪しい仕事に手を出した人間。

簡単に済む契約を信じた人間。

体に良いと言われるものを疑わず足し続けた人間。

どれも最初は、楽になりたかっただけだ。

苦しい時、人間は正しい道より短い道を探す。

だが、短い道が安全とは限らない。

むしろ本当に危ない道ほど、入口だけは明るい。

楽な道を選ぶ人間は、代金を後で払う。

その場では助かった気がする。

だが後から、金で払う。

信用で払う。

健康で払う。

暮らしで払う。

それはハードボイルドじゃない。

ハードボイルドな人間は、面倒な道を避けない。

確認する。

相談する。

断る。

待つ。

削る。

時間がかかっても、筋の通った道を選ぶ。

楽ではない。

だが、あとで自分の足元を失わずに済む。

覚えておくといい。

楽な道が悪いんじゃない。

なぜ楽なのかを考えないことが悪いんだ。

近道には、たいてい誰かの罠か、自分の甘えが隠れている。


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