ハードボイルド第二条

欲望に振り回されてはならない

欲望ってやつは、最初から悪い顔をして近づいてくるわけじゃない。

少し楽しいだけだ。

少し満たされるだけだ。

少し寂しさが埋まるだけだ。

だから人間は油断する。

これくらいなら大丈夫だと思う。

一度だけなら問題ないと思う。

誰にも迷惑をかけていないと思い込む。

だが、欲望は一度満たすと、次の理由を探し始める。

俺は事件を見てきた。

退屈から始まった関係。

寂しさをごまかすための火遊び。

若さや承認を確かめたくて踏み込んだ場所。

どれも最初は小さかった。

だが、小さいからこそ止まれなかった。

欲望に振り回される人間は、自分の都合を愛や息抜きや癒やしに言い換える。

その言い換えが始まったら危ない。

ハードボイルドじゃない。

ハードボイルドな人間は、欲しいものを全部取りに行かない。

欲しいものがあっても、守るべきものを先に見る。

一時の快楽で信用を失わない。

寂しさで筋を曲げない。

誰かに優しくされたからといって、自分の責任を忘れない。

欲望を消す必要はない。

人間だから欲はある。

だが、欲望にハンドルを握らせるな。

覚えておくといい。

一番高くつくのは、たいてい「少しだけ」のつもりで始めたことだ。


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