ハードボイルド第七条

常に先を読んで自戒しなければならない

事件は、起きた瞬間に始まるわけじゃない。

その前に必ず兆しがある。

小さな違和感。

少しの油断。

都合のいい判断。

本当ならそこで止まれた場所がある。

だが人間は、起きるまで気づかないふりをする。

俺は事件を見てきた。

大丈夫だと思っていた人間。

今だけだと思っていた人間。

これくらいなら平気だと思っていた人間。

その多くは、未来を読めなかったわけじゃない。

読もうとしなかっただけだ。

先を読まない人間は、今の都合で動く。

面倒だから省く。

怖いから見ない。

楽だから流される。

そして後になって言う。

こんなことになると思わなかった、と。

だが、そうなる前に見えていたものはある。

見なかっただけだ。

それはハードボイルドじゃない。

ハードボイルドな人間は、自分の油断を疑う。

調子がいい時ほど足元を見る。

大丈夫だと思った時ほど、何が大丈夫ではないのかを考える。

自分の判断に酔わない。

自分の善意を疑う。

自分の欲を警戒する。

それは臆病とは違う。

責任を持つということだ。

先を読む人間は、未来を当てる人間じゃない。

未来で起こりそうな失敗を、今のうちに減らす人間だ。

覚えておくといい。

事件の多くは、突然やって来る顔をしている。

だが本当は、もっと前からドアの外に立っている。


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