自分に酔ってはならない
人間というやつは、自分のことになると判断を誤る。
他人の失敗はよく見える。
だが、自分の失敗だけは見えなくなる。
自分だけは違う。
自分だけは大丈夫だ。
そう思い始めた時、人間は現実ではなく願望を見るようになる。
俺は事件を見てきた。
金で転んだ人間。
家庭を壊した人間。
くだらない勘違いで人生を狂わせた人間。
だが、その多くは特別に愚かだったわけじゃない。
ただ、自分を客観的に見られなくなっていただけだ。
それは楽な生き方だ。
都合の悪い事実を見なくて済む。
耳の痛い忠告を無視できる。
だが、ハードボイルドじゃない。
ハードボイルドな人間は、自分を特別扱いしない。
褒められても浮かれない。
批判されても慌てない。
まず事実を見る。
願望ではなく現実を見る。
そして、自分が間違っている可能性を捨てない。
それは気持ちのいい生き方じゃない。
だが事件から遠ざかる人間は、たいていそういう生き方をしている。
覚えておくといい。
人間を一番うまく騙すのは、案外、自分自身なんだ。